映画スティーブ・ジョブズは、1人の人間が抱えた複雑な内面に光を当てた、スゴい人間ドラマ!

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映画スティーブ・ジョブズは、MacやiPhoneを生み出したAppleの創業者であり、アニメーション・スタジオのPixarの創業者でもある故スティーブ・ジョブズを描いた映画だ。
 
普段からパソコンはずっとMac、スマホはずっとiPhone、Pixarの3DCGアニメーションが大好きな僕としては、映画スティーブ・ジョブズを観ないわけにはいかなかった。
 
結論から書いてしまうと、映画スティーブ・ジョブズは、原作の伝記本を大胆にアレンジした、スゴい人間ドラマだった。
 
実在の人物を映画化するのに、こんな構成には絶対しないだろうなという方法で物語を組み立てて、スティーブ・ジョブズという人間が抱えていた複雑な内面を見事に描くことに成功していた。
 
どうすれば、スティーブ・ジョブズの人間性を描ききることができるか?
 
その問いかけからスタートして、脚本、演出、演技、そのすべてがスティーブ・ジョブズを描ききるために、徹底的に考えて計算して、みんなの意図が一つに結びついて制作されたのが、映画スティーブ・ジョブズだった。
 
というわけで、今回の投稿では、制作チームがどこをどうしてスティーブ・ジョブズの人間性を描こうとしたのか、僕なりの考えをあれこれ書いていきたい。
 
多少のネタバレがあるかもしれないが、そこは許してほしい。


映画スティーブ・ジョブズを理解するには、脚本家アーロン・ソーキンの技術を理解する必要がある?

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映画スティーブ・ジョブズを正しく理解するためには、原作の伝記本を読むよりも、この映画の脚本を書いたアーロン・ソーキンを理解することが重要だ。
 
僕が脚本家アーロン・ソーキンの名前を知るようになったのが、アメリカのTVドラマ『ザ・ホワイトハウス(原題 : The West Wing)』だった。
 
アメリカの政治の中心であるホワイトハウスを舞台にして、政治の難しさと人間ドラマを見事に融合して、とても素晴らしいTVドラマ・シリーズだった。
 
アメリカでも『ザ・ホワイトハウス』は大変に好評で、アーロン・ソーキンが脚本を書いたシーズン1~4のすべてで、エミー賞の作品賞を獲得している。
 
その後、アローン・ソーキンはハリウッドでも注目される脚本家となり、映画ソーシャル・ネットワーク、映画マネーボールの脚本を書いている。
 
で、ここからが本題、アーロン・ソーキンってどんな技術の持ち主なのか?
 
理解してもらうために、1つ質問。
 

もし、あなたが好きな人にラブレターを書くとしたら、なにをどう書くだろう?

 
ほとんどの人は、どうやって自分の気持ちを伝えるか考えるだろう。でまあ、最終的には、「好き」とか「愛している」とか「付き合ってほしい」とか書いて、相手に返事を求めるのではないかと思う。
 
アーロン・ソーキンという脚本家は、「好き」とか「愛している」とか、結論を一言も書かずに、相手にそれを強く感じさせるには、なにをどう書けば良いか? ということを考えて文章を書く、それができる実力を持った脚本家なのである。
 
「好き」とか「愛している」とか一言も書かずに、それが強く感じられるラブレター、読むほうは胸がドキドキするに違いない。
 
ちなみに、アーロン・ソーキンのように、結論を書かずに相手に感じさせるという方法は、相手に感受性や理解力を求めるため、感受性や理解力が足らないと、内容が伝わらないというデメリットもある。
 
そんなわけで、アーロン・ソーキンが脚本した物語というのは、登場人物のセリフの内容だけを追いかけていたら、実は描こうとしていたのは、セリフの内容そのものではなく、登場人物が抱えている感情だった…ということが多い。
 
これが理解できないと、アーロン・ソーキンの脚本を理解するのは難しい。
 
映画スティーブ・ジョブズでも、さっきまでセリフの内容を中心的に描いていたのに、気がつくと、セリフの内容は物語にはあまり関係なくて、スティーブ・ジョブズの感情を描こうとしているという場面が、何度も出てくる。


映画スティーブ・ジョブズは、ジョブズの人間性に迫るため、普通では使わない物語構成をした?

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伝記本をもとにして実在する人間を描こうとすると、ほとんどの場合、子供時代の印象的なエピソードから物語がはじまり、主人公が亡くなるまでを描く。
 
伝記本がもとなのだから、その人の人生を描こうとするするのは当然だけど、多くの場合、いろんなエピソードを描こうとして物語が散漫になってしまう。
 
映画スティーブ・ジョブズで、脚本家アーロン・ソーキンが物語の中心にしたのは、スティーブ・ジョブズの人生ではなく、彼のその人間性そのものだ。
 
Appleが好きで、スティーブ・ジョブズやAppleに関する本をいろいろ読んできた僕が、常々感じていたことがある。
 
スティーブ・ジョブズという人は、彼とのエピソードを語る人によって、立場や関係性の違いによって、見えてくる人間性が大きく違っていて、どれが本当の彼の姿だろう? といつも謎めいた印象を持ってしまう。
 
アーロン・ソーキンも伝記本を読んで、同じことを感じたのかもしれない。
 
アーロン・ソーキンは、スティーブ・ジョブズの人間性を描くため、子供時代から亡くなるまでを物語にするのではなく、彼にとって象徴的だった3つの製品発表会を、物語の舞台として用意した。
 
簡単に3つの発表会を紹介しておこう。
 
 

1984年 - クパチーノ : Macintoshの発表会

 
Macintoshは、モニターと一体型のパソコンとして開発されたもので、僕の記憶が正しければ、GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)が搭載された世界初の一般用のパソコンだった。
 
 

1988年 - サンフランシスコ : NeXT Cubeの発表会

 
スティーブ・ジョブズがAppleを辞めさせられて、次に興したNeXTという会社だ。その初の製品として開発されたのが、NeXT Cubeというパソコンだった。大学などの研究機関向けに作られたワークステーションだったが、あまりに高価で、結果として売れなかった。
 
 

1998年 - サンフランシスコ : iMacの発表会

 
スティーブ・ジョブズが経営危機のAppleに復帰して、復活の一歩目として発表したのが初代iMacだった。モニターと一体型のパソコンで、カラフルな色彩の半透明のボディーが特徴的で、世界中で大ヒットした。
 
 
これらの3つの舞台を使って、アーロン・ソーキンは、どうやってスティーブ・ジョブズという人間性を描こうとしたのか?


映画スティーブ・ジョブズは、さまざまな方向から1人の人間性に光を当てた、スゴい人間ドラマ?

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社会人とかなると、多くの人が経験するのではないかと思うことがある。
 
それは、相手となる人の違いによって、自分のキャラクターが変化することだ。
 
当然といえば当然なのだが、家族が相手のとき、友達が相手のとき、職場の後輩が相手のとき、恋人が相手のとき、仕事のクライアントが相手のときなど、相手によって自分の中から現れるキャラクターが変化する。
 
例えば、相手のことがすごく好きなんだけど、その人といると自分の嫌なキャラクターが現れてしまって、うまく関係を続けられない...という経験をしたことがある人も、少なくないのではないかと思う。
 
脚本家アーロン・ソーキンが、スティーブ・ジョブズの人間性を描くために活用したのが、この誰でも経験したことがある、相手によってキャラクターが変化するところだ。
 
映画スティーブ・ジョブズでは、発表会が行われる直前に、スティーブ・ジョブズが対することになる5人の人物との関係性を中心に、物語が展開していく。
 
5人の人物と対することで、スティーブ・ジョブズという人間を5つの方向から照らせば、その人間性と内面を描くことができるのではないか? というプランだ。
 
スティーブ・ジョブズと対することになる、5人の人物を紹介しよう。
 
 

マーケティング担当 : ジョアンナ(女性)

 
ジョアンナは、映画のジョブズがもっとも信頼を寄せている人物で、仕事のことも私生活のことも、素直に自分を表現できる相手。人の頼みごとには、簡単にOKを出さないジョブズだが、ジョアンナの頼みごとであれば、ちゃんと考慮して対応する。映画のジョブズにとって、人生のパートナーのような存在。
 
 

Appleの共同創業者 & 親友 : ウォズニアック(男性)

 
ウォズニアックは、かつて同じ夢を見て、ジョブズと共にAppleを立ち上げた人物だが、求めるものの違いで対立している。ウォズは、技術者がAppleの成功を作ったと考え、ジョブズはオーケストラの指揮者のように自分が技術者を動かしているから成功していると考えている。
 
 

自分が連れてきたCEO : スカリー(男性)

 
スカリーは、Appleのためにジョブズが引き抜いたCEOで、ビジネス上の大先輩だ。偉大なビジョンを持ちながら、なかなか製品をヒットさせられないジョブズにとって、父親のような存在であり、自分をAppleから追放した張本人でもあり、屈折した感情を抱いている。
 
 

元恋人 : クリスアン(女性)

 
クリスアンは、ジョブズの元恋人で、子供の認知や養育費のことで常に対立している。ジョブズは、クリスアンが女性として母親として信頼できない人間だと考えていて、彼女の要求がひどく身勝手なものに感じられる。
 
 

クリスアンの娘 : リサ(女の子)

 
リサは、元恋人クリスアンの娘で、母親もリサ自身もジョブズが父親だと信じている。ジョブズは、クリスアンが信頼できないという理由で、リサの認知や養育費を拒んでいるが、心の奥底では自分の娘だと感じている。
 
 
5人の人物と対したとき、スティーブ・ジョブズのどんなキャラクターが現れて、どんな人間性が見えてくるか?
 
これこそが、脚本家アーロン・ソーキンが描きたかったスティーブ・ジョブズであり、制作チームが全力で実現した映画スティーブ・ジョブズのテーマである。


まとめ

映画スティーブ・ジョブズ、iTunesでもう1度観たいと思っている。
 
というのも、最初に映画館で観たときには、半分ぐらい物語が進むまで、この投稿で書いたような物語の仕組みや狙いが理解できていなかったからだ。
 
物語の仕組みや、脚本家アーロン・ソーキンの狙いがわかった上で、改めて映画スティーブ・ジョブズを観ると、きっと新たな発見やおもしろさがあるだろう。
 
映画スティーブ・ジョブズは、決して万人が楽しめるタイプの映画ではない。
 
しかし、1人の複雑さを抱えた人間を描くのに、こんな方法があるよということを提示した点で、また、歴史に残る偉大なヒーローの人間性を真摯に描こうとした点で、記憶に残るすばらしい映画だった。
 
 

2016.03.30 - おの なおと


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