ゼロのちから - 成功する非営利組織に学ぶビジネスの知恵11は、NPOの知恵を明らかにしたオススメ本!
この投稿を書く理由?
30歳を過ぎた頃から、なぜだか僕は、ビジネス書ばかりを読むようになった。
20代のころは、小説やノンフィクションばかりを読んでいたのだが、もっとリアルな興奮があって、もっとおもしろい本を読みたい! そんな欲求を追求しているうちに、行き着いたのがビジネス書だ。
おかげで、実際にビジネスで成功した人が体験談を執筆したものから、大学教授が世界中の事例を紹介しながら持論を展開するものまで、いろんなビジネス書を読んできた。
僕が特にオススメするのが、海外の人が書いたビジネス書だ。
日本人の書いたビジネス書が、自分の体験や考えを中心に書いているのに対して、海外のビジネス書は、世界中の事例や実験などを調べて、それも一緒に書いてあるので、なるほど!と納得するところが大きい。
というわけで、今回は、ゼロのちから - 成功する非営利組織に学ぶビジネスの知恵11という本が、すごくおもしろかったので、ぜひオススメ本として紹介させてほしい。
非営利組織《NPO》というと、ビジネスから遠く離れた存在だと思っていたけど、この本を読んで、僕の認識は大きく変わった。
非営利組織の世界の人が執筆したビジネス書を読んだのは、たぶんこれが初めてだ。
ゼロのちからで初めて知った! 世界の非営利組織?
ゼロのちからを読むまで、僕が非営利組織に抱いていたイメージは、わずかな給料で、困難を抱えている人のために懸命に働く人たちの集団というものだ。
なにかを信じている純粋な目で、自分の信念をしゃべり続ける、新興宗教の勧誘をしている人たちと、どこか似ているイメージだった。
ゼロのちからを読んで、僕の認識は大きく変わった。少なくとも、世界で大活躍している非営利組織の人たちは、新興宗教の人たちというより、スタートアップ《新興企業》の人たちに近い存在のようだ。
スタートアップと違うのは、なにを自分の信念として、なにを組織の目的とするか、だけなのかもしれない。
ゼロのちからを読んで、僕が初めて知った非営利組織の現実を、いくつか紹介したい。
著者のナンシー・ルブリンによると、非営利組織の世界も、営利企業の世界と同じように、同じ困難を解決するための組織が多く存在していて、それぞれが資金獲得やサービスで競争している。
そして、非営利組織の中にも、怪しげな組織や、どうしようもない人間たちが無数に存在しているのだそうだ。
僕がもっとも驚いたのが、今のアメリカでは、アイビーリーグ《名門私立大学8校のこと》の大学生のあいだで、もっとも競争率の高い就職先が、Teach for Americaという非営利組織だということだ。
名門私立大学の多くの学生が、わずかな給料しかもらえない非営利組織で働きたがってる? 日本じゃ絶対にありえないことを起こしてしまう、アメリカにはそんなスゴい非営利組織もあるのだ。
ゼロのちから - 成功する非営利組織に学ぶビジネスの知恵11 は、自分でもスゴい非営利組織を作った著者のナンシー・ルブリンが、大きな成功を達成した非営利組織などを取材して得た教訓と、自身の経験をもとにして、導きだしたビジネスの知恵11個を紹介している、ちょっと異例のビジネス書だ。
ゼロのちからを読んで納得! 著者のナンシー・ルブリンが導きだした11の知恵?
ゼロのちからで、著者のナンシー・ルブリンが書いている知恵の根底にあるのが、非営利組織が、人材も、お金も、職場も、仕事も、仕事相手も、少ないものから多くを生みださなければならないという現実だ。
すべてが少ない、足りないところから、どうやって価値を作り、ブランドを築いていくのか?
ゼロのちからに書いてある、11の知恵をざっと紹介してみたい。
01 社員のやる気を最大化する
この知恵で重要なのは、お金じゃないところで、社員をやる気を最大化しようとしているところだ。大きなことを実現したいという目的意識、仕事を楽しくするための遊び心、自分が組織を動かしているという充実感、スキルを学んで得られる成長実感、自分の仕事に誇りが持てる肩書きなど、社員の心や情熱に訴えかけることで、やる気を最大化する方法や実例がおもしろい。
02 お金をかけずにブランドをつくる
この章で、ナンシー・ルブリンは、非営利組織にとってたった1つの資産が、ブランドであり、だからこそブランドをつくることが大切だと書いている。もっとも大切な使命に集中して見失わないこと、同業他社と比べてユニークで差別化されていること、顧客や時代にあったサービスになっていること、ブランドの立ち位置を常に見直すことなど、どうすれば小さな組織が大きなブランドを築けるかがわかる。
03 外部の人材を活用する
この知恵では、組織内の人間だけでなく、外部の人間が、広告塔になって、味方になって、支援者になって、サービスの評価をして、仲間になってくれる可能性があることを書いている。中でも、もっとも重要だと感じたのが、口コミが最高のマーケティングになることを書いている部分だった。ネットやSNSで世界中の人が、つながるようになった現在で、これほど重要なことはないだろう。
04 賢くお願いする
もしかしたら、僕にとって、この章が1番参考になったかもしれない。というのも、僕は、人にお願いをするのが苦手だからだ。多くの非営利組織は、相手の良心や感情に訴えかけて、寄付を集めているわけで、賢くお願いするプロといって間違いない。いかに賢くお願いして、寄付を集め、さらにお金以外のものをねだるかを、ユーモアとともに書いている。
05 お客さまを味方につける
非営利組織にとって、お客さまとは、もちろん寄付をしてくれる人のことだ。アメリカでは、寄付をすると節税になるから、もちろんそれを目的に寄付する人も多い。それを理解した上で、お客さまを人として考えること、お客さまにコミュニティーに参加してもらうこと、お客さまを自分たちの仲間に加えることなど、おもしろい方法を紹介している。
06 役員にもっと働いてもらう
役員というと、たいして仕事もしないのに、多額の役員報酬をもらってる、年寄りたちの集まりというのは、日本だけでなく、アメリカでも同じらしい。著者のナンシー・ルブリンは、自分の組織で役員改革を行った経験をもとにして、存在だけの役員ではなく、役員にもっと働いてもらう方法を、いくつも書いている。読んで、組織を活性化させる優れた方法ばかりだと感じた。
07 能力を引き出す人事を行う
著者のナンシー・ルブリンによると、偉大な非営利組織には、人事である原則をうまく活用しているという。それが、経験や専門知識ももちろん大切だけど、情熱はそれよりもっと大切だということだ。この章でもっとも興味深いのが、ナンシー・ルブリンの組織にやってきた、ジョージという青年の物語だ。テクノロジーの知識ゼロだったジョージが、情熱を燃やして、いかにCTO《最高テクノロジー責任者》へ昇っていったかという物語は、非営利組織の人事戦略をみごとに表している。
08 ストーリーを知ってもらう
映画を見るのが大好きな僕にとって、物語には人の心を動かす力があるというのは、よく知っていることだ。この章では、物語の力を使って、ブロンドの位置付けをし、組織の危機を乗り越えた逸話を共有し、口コミを広げていくか、その戦略や考えを紹介している。また、物語を作るのではなく、組織の中から物語を見つけることの重要性も説いている。
09 財務を上手に管理する
アメリカの非営利組織は、いかにお金を使ったのか、IRS《アメリカ内国歳入庁》の規定にしたがって、すべてを一般公開しなければならないそうだ。IRSの規定は、上場企業の業績開示義務よりも、はるかに細かいとか。そこで、その厳しい規定のもとで、いかに財務を管理しているか、具体的な方法を紹介している。節約はもちろん、予算の透明化、複数年で予算を考えることまで、営利企業にとって参考になる点がいくつもある。
10 物々交換を活用する
非営利組織では、限られたお金を最大限に活用するため、必要に迫られて物々交換を活用しているという。この章が興味深いのは、単に物々交換をうまくやる方法だけでなく、物々交換には物を得る以上のメリットがあること、物とサービス、人材と人材、評判と評判なども交換して、お互いを高めることができるという事例を紹介していることだ。
11 イノベーションを生み出す
イノベーションというと、ベンチャー起業が生み出すものだと考えがちだけど、ナンシー・ルブリンによると、非営利組織にはイノベーションがつきものだという。というのも、非営利組織は、差し迫った危機に対応することが多いため、必要性と緊急性に迫られてイノベーションが生まれるからだ。この章では、組織でイノベーションが生まれやすくなる、さまざまな方法を紹介している。
ゼロのちから、著者のナンシー・ルブリンってどんな人?
ゼロのちから - 成功する非営利組織に学ぶビジネスの知恵11 の著者ナンシー・ルブリンは、法学部の学生だった23歳の時に、亡くなった祖父の遺産として5000ドルを受けとる。
そして、その5000ドルで、低所得の女性に面接用のスーツを貸しだすなど、女性の経済的自立を支援する非営利組織、Dress for Successを創業する。1996年のことだそうである。
Dress for Successは、その後、世界中に支部ができて、現在では年間5万人以上の女性をしている。
続いてナンシー・ルブリンは、2003年に10代の若者たちにボランティアの仕事を仲介する非営利組織、DoSomethingのCEOに就任。
傾きかけていたDoSomethingの再建に成功して、2000年に「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」に選ばれ、2007年に世界経済フォーラムで「ヤング・グローバル・リーダー」に選ばれた。
ゼロのちからを読むと、ナンシー・ルブリンが、強力な情熱と、現実を直視できる感覚、そして厳しい状況でもユーモアを忘れない心の豊かさが感じられる。
ちなみに上の写真は、現在アメリカのMITメディアラボの所長を務めている伊藤穰一が、ナンシー・ルブリンを撮影したものだ。
彼がFlickrにアップしたもので、クリエイティブ・コモンズに指定されていたので、使わせていただいた。
まとめ
ゼロのちからを最後まで読んで、僕が最初に思ったのが、ゼロから多くのものを生みだすには、本物のすごい情熱が必要だということだ。
そして、少なくとも祖父の遺産を受けとったナンシー・ルブリンには、その本物の情熱があった。
そして、世界中のスゴい非営利組織には、彼女のような人がたくさん働いていて、世界を救うべく活動している。
去年から、僕は個人事業主として活動しはじめていて、当然のことながら、僕も非営利組織と同じように、人材も、お金も、職場も、仕事も、仕事相手も、とても少ない状態からスタートしている。
この少ない状態から、本当に価値のあるものを生みだして、仕事を獲得していけるのか、まだ暗中模索の状況だが、ゼロのちからは作戦面でも、精神面でも、大いに価値のある本だった。
もし、あなたも、すべてが少ない足りない状況から、目的を達成しなければならないなら、ゼロのちから - 成功する非営利組織に学ぶビジネスの知恵11が、必ず役に立つと思うので、ぜひ読んでほしい。
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