映画「グリーンブック」で考えた、偏見と差別とロードムービー?

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映画「グリーンブック」を見たくなった理由?

それは、海外のYouTubeチャンネルで予告編を見たときに、なんとなくオモシロそうな映画だなと感じていて、それが2019年の第91回アカデミー賞で作品賞・助演男優賞・脚本賞を受賞したからだ。ぜひとも映画館で見たいと思った。
 
初めて予告編を見たときの印象は、チンプラ風のイタリア系男性と、身なりがビシッとしている黒人ピアニストが、あからさまに差別が残っている時代のアメリカ南部を旅するという設定が珍しくて、オモシロそうだなと感じた。
 
プラスして、これまで多くの映画を見てきて、ピアニストが主人公の映画は優れた作品が多いという自分なりの経験則もあって、映画「グリーンブック」を見たくなった。
 
映画「グリーンブック」は、とても素晴らしい映画だった。
 
世界中で人種・性別・宗教・国家・歴史・政治・差別などを巡って、人間同士のさまざまな対立が起こっている現代を反映しているテーマを描いているという意味で、第91回アカデミーで作品賞・助演男優賞・脚本賞を受賞するのにふさわしい作品であった。
 
というわけで、今回の投稿では映画「グリーンブック」について、個人的な解説と考えをあれこれ書いていこうと思う。ぜひ読んでもらえたらと思う。


映画「グリーンブック」は、生まれも、育ちも、考えかたも違う、2人の男が一緒に旅をする物語?

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映画「グリーンブック」の魅力は、なんといっても2人の主人公だろう。
 
ここで、2人の主人公を紹介・解説する前に、「グリーンブック」の舞台となる1962年のアメリカについて紹介しておきたい。1962年のアメリカは、ジョン・F・ケネディが大統領だった時代で、公民権運動を推し進めようとしている最中であった。つまり、黒人差別がまだまだ強く残っていた時代であり、翌年の1963年にはキング牧師が有名な「I have a dream」の演説を行なっている。
 
 

イタリア系アメリカ人のリップ

ヴィゴ・モーテンセンが演じるチンピラ風のイタリア系アメリカ人のリップ(彼のあだ名)は、ニューヨークの一流ナイトクラブで用心棒として働いていて、愛する妻と2人の子供を持っている。リップは喧嘩がめちゃくちゃ強くて、金のためなら平気でマフィアのボスを騙し、黒人に対して強い偏見を持っていて、忌み嫌っている。
 
日本ではあまり理解されていないけれど、当時のアメリカではイタリア系の人たちも、あからさまに差別されている人たちだった。だから、当時のイタリア系の人たちはまともな仕事に就くことができず、リップのように用心棒をしたり、レストランを営んだり、マフィアの一員になる人がほとんどだった。
 
禁酒法時代(1920〜33年)に活躍したギャングのアル・カポネは、ブルックリンで生まれたイタリア系アメリカ人であったし、映画「ゴッドファーザー」に登場する主人公もマフィアの構成員も、ほとんどがイタリア系アメリカ人である。アメリカでは、新たに移民してきた人たちが差別されるという傾向があり、イタリア系アメリカ人より以前には、アイルランド系アメリカ人が差別されていた。
 
リップは、イタリア系男性の典型的な存在で、誰よりも家族を愛し、家系の絆を大切にしている。勉強が苦手で、喧嘩の強さと、さまざまな状況に臨機応変に対応できる能力だけで、ここまで生きてきたような人間である。差別と戦うというような信念はまったく持っておらず、自分の気持ちが赴くままに自由に生きている。
 
 

アフリカ系アメリカ人のシャーリー

マハーシャラ・アリ(アカデミー助演男優賞を受賞)が演じるアフリカ系アメリカ人のシャーリーは、カーネーギーホールがあるビルの上階に住んでいる裕福なピアニストである。アフリカから輸入した高級品に囲まれた贅沢な暮らしをしていて、インド人の召使いを雇っている。
 
シャーリーは、ホワイトハウスでも演奏したことがあるほどの天才ピアノストで、いつもビシッとした服装をしていて、常に高貴な雰囲気を漂わせている。以前は結婚していたものの、物語が始まった時点では離婚していて、家族と呼べるのは兄しかいないのだが、ずっと連絡が途絶えている。
 
映画の中でも少し紹介されているけれど、1962年のアメリカで黒人音楽といえばジャズであり、本格的なエレキギターの演奏がはじめられていた時代でもあった。そんな時代にあって、シャーリーが演奏しているのは、完全無欠のクラシック音楽である。
 
これは、当時のアメリカにおいて、シャーリーが相当に特殊な立場であったことを示している。というのも、当時クラシックを演奏するピアニストはほとんどが白人であり、クラシック界において黒人であるシャーリーは圧倒的な少数派である。一方で、当時の黒人が演奏する音楽といえばジャズであり、黒人音楽の世界においてもシャーリーは圧倒的な少数派なのである。
 
シャーリーはピアニストとして絶対の自信を持っていて、正義・公正さを・非暴力が大切だと信じていて、常に自分の信念を貫こうとしている頑なな人間である。シャーリーは、先に紹介したリップとは対照的な性格の持ち主であり、リップのような自由でガサツな人間の行動を受け入れることができない。


映画「グリーンブック」で考えた、人が偏見を持つ理由?

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なぜ人は偏見を持つのだろう?
 
映画「グリーンブック」を見ながら、ずっと疑問に感じていたことに、自分なりの答えが出たような気がしたので、物語に沿ってそれについて書いてみたい。あくまで個人的な考えなので、同意できない人もいるかもしれない。
 
イタリア系アメリカ人のリップは、物語の序盤、自宅の配管を修理にやって来た黒人男性が使ったコップを、洗いもせずにゴミ箱に捨てる。リップは、当時の多くの白人と同じように、黒人を忌み嫌っている。
 
リップは、家族を養うために仕事として黒人ピアニストのシャーリーの用心棒として、南部の演奏旅行に付き添うことになる。リップは、夜の世界で用心棒として生きてきた人間であり、どんな状況にも対応することができる。黒人のことを忌み嫌っていても、それを表に出すことなく、シャーリーの用心棒として演奏旅行を続ける。
 
映画「グリーンブック」では、演奏旅行を続けているうちに、リップとシャーリーがお互いのことを知り、相手を理解するようになって友情が芽生える。そして、序盤では黒人のことを忌み嫌っていたリップが、偏見を克服して、黒人を受け入れられるようになる、シャーリーに力を貸すようになる。
 
 

人が偏見を持つ理由?

自分なりに出した答えを書くと、偏見というのは情報の非対称性によって生まれる現象で、つきつめて考えると、人は誰でも偏見を持っているし、持ってしまう。ちなみに、情報の非対称性というのは、経済学の研究の中で生みだされた言葉である。
 
情報の非対称性とは、ある商品を売る人と買う人がいたとして、売る人は商品の情報をたくさん知っているのに対して、買う人は商品の情報をあまり知らないという現象のことだ。あなたも、あの商品に興味があるのだけど、実際に買って使ってみないと、本当に役に立つのかどうかよく分からない... という経験があるだろう。
 
それが、情報の非対称性だ。
 
この現象、経済学の世界だけでなく、人間の世界でも起こるというのが、私の考えだ。例えば、あなたとAさんがいたとして、Aさんは自身のことをほぼ100%知っているのに対して、あなたはAさんのことを10%ぐらいしか知らない... というのはよくあることだ。
 
そこで、あなたが自分はAさんのことを10%しか知らないと自覚していて、Aさんのことを安易に判断するのは間違っていると考えられるのであれば素晴らしい。ところが、ほとんどの人はそう考えるのではなく、10%の情報だけでAさんという人間の全体像を作り上げてしまう。
 
目の見えない賢者が、ゾウの長い鼻を触っただけで、ゾウというのはヘビのような生き物だと考えてしまったという寓話と同じである。人が人のことを100%知るのが簡単でない以上、これは誰にでも自然に起こることで、ほとんどの人はその自覚さえ持っていない。
 
つまり、世界中の人間関係の数だけ、偏見が存在するというのが、私の考えである。
 
そう考えると、昔と比べて、ネットやSNSによって、さまざまな人の考えや行動を知ることができるようになった現代において、そこら中に人々の偏見が溢れているように感じられるのも、当然のことなのかもしれない。
 
 

どうすれば人は偏見を克服できるか?

映画「グリーンブック」は、誰もが知らず知らずのうちに持ってしまう偏見を克服する、もっともシンプルで普遍的な方法を描いている。それは、相手のことを知り、認め、理解することだ。そうすることで、相手のことを10%ぐらいしか知らなかった状態から、80%ぐらい知ることができ、相手の全体像が見えるようになり、偏見を克服することができる。
 
イタリア系アメリカ人のリップは、最初は家族を養うために黒人ピアニストであるシャーリーの用心棒の仕事をすることになる。その時点でのリップは、黒人のことも、シャーリーのことも、まったく知らなくて、偏見しか持っていない。
 
リップが初めてシャーリーのことを認めるのは、彼のピアノの演奏を聴いたときだ。彼の素晴らしいピアノ演奏に思わず聴き惚れてしまう。そして、彼に興味を抱くようになる。
 
リップは、シャーリーの家族のこと、黒人音楽のこと、黒人が置かれている状況のこと、個人的なプライバシーに関わること、差別が強く残っている南部で演奏旅行をしている理由などを知ることで、シャーリーという人間のことを認め、正しく理解するようになる。
 
演奏旅行の中で、リップはシャーリーに対する偏見を克服して、2人は親友になる。
 
友達になる、仲間になる、親友になる、恋人になるというのは、人類がずっと昔から行ってきたことで、そのおかげで人類が繁栄したり、さまざまな歴史的な出来事が起こったりした。特に友情については、あまりにも普通の人間関係なので、映画の中心的なテーマとして描かれることは少ない。
 
 

映画「グリーンブック」の意味?

どんな映画も、その時代に起こっている社会や人間の姿を反映させずに、物語を作るのは難しい。エンターテイメント映画であればまだしも、人間を描くことを中心にしている映画では、時代性を無視するとただの夢物語になってしまう。だから、映画「グリーンブック」がこの時代に作られ、この時代に評価されたのは、決して偶然ではない。
 
現代はネットやSNSによって、さまざまな人の考えや行動を知ることができるようになった時代である。それだけ人と人との交流が簡単になり、交流範囲が広がったのと同時に、人の部分だけを知る機会が増えたため、自覚なき偏見が爆発的に増えている。
 
1人の人間の中に生まれた偏見は小さくても、ネットやSNSにはそれを多数に拡散し、共有し、増幅させる効果がある。似たような偏見が無数に集まり、共通認識となり、巨大な怨嗟や差別を生みだすと、国家や社会を悪いほうへ歪める原動力になってしまう。
 
映画「グリーンブック」が、この時代に作られ、この時代に評価された意味は、そこにある。人と人はどのように偏見を克服していくのか、リップとシャーリーが親友になっていく姿を描くことで、偏見に対する誰でも使用可能な処方箋を提示している。


映画「グリーンブック」での差別との戦いと、時代の変化?

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ホワイトハウスでも演奏したことがあるピアニストのシャーリーは、リップが運転する車でアメリカ南部を演奏旅行する。ホールで観客を前にして演奏することもあれば、地元の富裕層が集まるパーティーでの演奏もあり、場所もスタイルもさまざまである。
 
シャーリーの演奏を聴きに集まるのは、すべて白人の富裕層である。
 
映画「グリーンブック」の中では直接的には描かれないけれど、たくさんの黒人を奴隷のように働かせて、裕福な生活をしているのが、南部の白人富裕層である。
 
となると、シャーリーはなんのために南部で演奏旅行をするのだろうという疑問がわいてくる。物語の序盤で、シャーリーが豪勢な生活をしていることが明らかになるので、お金のためではないだろうし、白人たちの前で差別反対を訴えるわけでもない。
 
シャーリーは演奏会の主役であるにも関わらず、南部の白人たちから、当然のように差別を受ける。黒人専用のホテルにしか泊まることができず、黒人専用のトイレへ案内され、スタインウェイのピアノを用意してもらえず、お店に入ってもスーツを試着させてもらえず、不審な行動をとったわけでもないのに警察から職務質問を受ける。
 
にもかかわらず、シャーリーは懸命にピアノを演奏して、笑顔で観客に感謝する。パーティー会場であれば、白人富裕層の人たちに笑顔で挨拶して会話する。夜の街で生きてきたリップは、富裕層の人たちを胸クソの悪い連中だと感じていて、そんなシャーリーの笑顔や行動がまったく理解できない。
 
 

シャーリーは顔で笑って、腹で泣く?

日本を代表する人情映画「男はつらいよ」の同名主題歌に、こんな歌詞がある。
 
男とゆうもの、つらいもの
顔で笑って
顔で笑って、腹で泣く
腹で泣く
 
心が感じているものと、表情に現れているものは、必ずしも同じではない。というところが人間の興味深いところで、シャーリーの笑顔をそのままの感情だと感じてしまうと、彼を演じたマハーシャラ・アリという役者さんの演技力を見誤ってしまう。
 
演奏旅行の当初から、シャーリーは笑顔を見せているけれど、それは決して心からの笑顔ではない。白人たちから当然のように差別を受けても、シャーリーはいつも顔で笑って、腹で泣いている。マハーシャラ・アリという役者さんが第91回アカデミー賞で助演男優賞を受賞したのも、顔で笑って、腹で泣くというのを見事に表現できていたからである。
 
 

シャーリーはなぜ南部で演奏旅行をするのか?

それは間違いなく、黒人差別が色濃く残っているアメリカ南部で、差別と戦うためだ。ただし、シャーリーが差別と戦うために選んだ武器は、演説や運動や暴力ではなく、素晴らしい音楽と、人々との交流と、笑顔という武器だ。
 
だから、シャーリーは黒人音楽として広く知られているジャズを演奏するのではなく、富裕層の白人にとって馴染みのあるクラシック音楽で演奏旅行をしている。素晴らしい音楽を演奏することで、人々を魅了して、黒人も1人の人間であることを感じてもらい、教育によって素晴らしい能力を得ることができることを証明しようとする。
 
リップは演奏旅行を続けているうちに、普通に差別が行われているアメリカ南部のまっただ中で、シャーリーが静かな戦いをしていることを理解しはじめる。リップは生粋のイタリア系アメリカ人であり、黒人ほどあからさまではないものの、同じ白人からやんわり差別を受けているので、シャーリーの戦いが人ごとに思えない。
 
映画「グリーンブック」では、シャーリーの静かな戦いが実を結んだのかどうか、そこまでは明らかにならない。映画の舞台である1962年の翌年には、キング牧師が行った有名な「I have a dream」の演説をすることになるので、シャーリーだけでなく、さまざまな場所でさまざまな黒人が戦ったことにより、大きな社会運動につながったのだと考えるのが妥当だろう。
 
 

リップとシャーリーが感じる時代の変化?

映画「グリーンブック」では、黒人差別に対する時代の変化がほんのり感じられるエピソードが入っていて、それが希望を感じさせてくれる。
 
物語の中盤、リップとシャーリーは白人警官から理由もなく職務質問を受けることとなり、カッとなってリップが白人警官を殴ってしまう。そして、リップとシャーリーは留置所に入れられることになってしまう。
 
物語の終盤、リップとシャーリーが演奏旅行を終えて、車でブルックリンへ帰ろとしていると、またもやパトカーに呼び止められる。パトカーから降りてきたのは、やはり白人警官で、物語の中盤でのエピソードがあるので、リップとシャーリーはもちろん、観客もまた捕まってしまうのではないかと心配になる。
 
ところが、物語終盤に現れた白人警官は、2人の車がパンクしているから修理したほうが良いとアドバイスして、修理を見守ってくれる。すべての白人警官が黒人を差別しているわけではないことが分かり、リップとシャーリーは驚くのと同時にとても安心する。
 
2つの似たような出来事が、まったく別の結果をもたらすというのは、物語の中で登場人物や状況の変化を描くのに、とても効果的な方法で、映画でも多く使われている。
 
物語の終盤に、この白人警官のエピソードが入ったことで、映画「グリーンブック」は社会が少しずつ良い方向へ変化していることを描き、観客が希望を感じられるように物語を昇華させることに成功していた。


映画「グリーンブック」で感じた、ロードムービーの特徴?

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主人公たちが、ずっと旅をしている映画のことをロードムービーという。私はほとんど旅をしない人間なのだけれど、映画「グリーンブック」を見ながら、ロードムービーには独自の大きな特徴があるなと感じたので、それについて簡単に紹介したい。
 
ロードムービーの基本は、主人公が複数存在(2〜4人)していて、ある場所からある場所に到達するまでのドラマを描くことにある。移動手段は車が圧倒的に多くて、他にバイク・徒歩・列車・飛行機という感じだろうか。
 
 

ロードムービーの大きな特徴 その1

ロードムービーの大きな特徴の1つは、移動した先々で、主人公たちがさまざまな出来事に遭遇して、物語が展開していくところだろう。移動した先々にある独特の場所、特産品、イベント、その場所に住んでいる人たちの独自性などに触れることで、主人公たちに新たな発見や変化をもたらす。
 
映画「グリーンブック」の場合、黒人差別が強く残っているアメリカ南部という地域の特殊性と、黒人を差別的に扱うことになんの抵抗も感じない白人たちという特殊性が、リップとシャーリーにさまざまな出来事を起こす。
 
特に印象的だったのが、たくさんの黒人が農場で働いているところで、リップが運転している車が故障してしまう場面だ。リップが黒人であるシャーリーを主人のように扱い、白人であるリップが車を修理しているところを、農場で働いている黒人たちは奇異の目で見つめる。
 
物語を最初から見ている観客にとって、それは普通の場面かもしれないけれど、アメリカ南部の農場で働いている黒人たちにとって、それは絶対にありえない場面だ。生まれた時から、白人が黒人たちを働かせている世界しか知らない人にとって、リップとシャーリーの関係性は、世界の構造が決して1つではないことを知らしめる、大きな出来事である。
 
 

ロードムービーの大きな特徴 その2

ロードムービーの大きな特徴のもう1つは、どんな移動方法であれ、移動中に主人公たちだけの場面になることが多く、そこで密室のような会話劇になることである。会話劇によって、主人公たちの人間性が分かり、それによってさまざまな関係性が生まれる。
 
個人的に、映画「グリーンブック」でもっとも好きなのが、リップがケンタッキーフライドチキンを買ってきて、車の中で食べ始める場面だ。くだらない会話劇の中で、リップとシャーリーの人間性の違いがうまく描かれていて、2人が違いを理解して、相手を受け入れるようになり始めるところが微笑ましい。
 
移動しているにも関わらず、密室のような空間が生まれて、その中で主人公たちの会話によって人間ドラマが起こるというのは、ロードムービー以外ではなかなか生まれない特殊なシチュエーションだ。
 
ということは、素晴らしいロードムービーを制作しようと思うと、人間ドラマが生まれるような魅力的な主人公が2人以上必要になるということだ。映画「グリーンブック」の主人公であるリップとシャーリーは、その要件をしっかり満たしていて、素晴らしい人間ドラマが生まれていた。
 
 

ロードムービーにおける、旅の始まりと終わりについて?

ロードムービーにおいて、どんな場所(状況)から旅が始まり、どんな場所で旅が終わるのかが、とても重要になる。というのも、それが映画の印象を大きく決定づけるだけでなく、映画のテーマそのものに大きく関わってくるからだ。
 
例えば、主人公たちがある場所(状況)から旅を始めたとして、映画の終わりでまったく別の場所にたどり着いたとしたら、その主人公たちは自分たちが生きるべき新たな場所を見つけたということになる。このタイプの物語では、旅そのものが苦難や困難の連続になることが多く、主人公が大きく成長した結果、それまでの日常に居場所を失う。
 
他の例だと、主人公たちがある場所から旅を始めたのだけれど、どこにもたどり着かず、途中で死んでしまうというタイプの物語もある。この場合だと、物語は完全なる悲劇となり、主人公たちがどんな強い思いを抱いて旅をしていたのか、という余韻だけが強烈な印象として観客の中に残る。
 
映画「グリーンブック」では、リップとシャーリーは南部での演奏旅行を終えて、ニューヨークの自宅に帰ってくる。ロードムービーの構造としては、旅を始めた場所が、旅を終える場所ということになる。
 
このタイプの物語では、主人公たちは旅をすることで非日常を経験して、人間性や人間関係が変化して、また日常に戻ってくるというテーマになることが多い。リップとシャーリーの場合も、南部での演奏旅行という非日常を経験したことによって、相手のことを理解するようになり、2人は親友になって日常に戻ってくる。
 
リップとシャーリーは演奏旅行を通して、偏見を克服し、差別と戦い、親友となって日常へ戻ってくる。映画「グリーンブック」は、そんな素晴らしいロードムービーである。


映画「グリーンブック」の予告編と基本情報?

映画「グリーンブック」、実はここで書いたこと以外にも、まだまだあれこれ語れるような要素がある映画で、私に充分な根気と執着心があれば、もっと書いていただろう。読む人にとっても、これ以上はさすがに大変だと思うので、今回はここで終わろうと思う。
 
ちなみに、映画「グリーンブック」は実話を元にした物語である。
 
最後に、映画「グリーンブック」についての基本情報だけ、紹介しておこうと思う。
 
 

映画「グリーンブック」の基本情報

英語タイトル : Green Book
日本語タイトル : グリーンブック
リップ役 : ヴィゴ・モーテンセン
シャーリー役 : マハーシャラ・アリ
リップの妻役 : リンダ・カーデリーニ
監督 : ピーター・ファレリー
共同脚本 : ピーター・ファレリー
共同脚本 : ニック・バレロンガ(リップの実の息子)
 
 

映画「グリーンブック」のおもな受賞

第91回アカデミー賞 作品賞受賞
第91回アカデミー賞 助演男優賞受賞
第91回アカデミー賞 脚本賞受賞
第76回ゴールデン・グローブ賞 作品賞受賞
第76回ゴールデン・グローブ賞 助演男優賞受賞
第76回ゴールデン・グローブ賞 脚本賞受賞
2018年トロント国際映画祭 観客賞受賞
 

2019.06.12 おの なおと


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